「イニシャルがC.K.という女性ミュージシャンといえば?」と訊かれたら誰を思い浮かべるだろうか。CAROLE
KING?CHAKA KHAN?・・・・CRYSTAL KAY?。
ワタクシなら迷わずCAROL KAYEと答える。「そんな奴知らねぇヨ」などと言ってはイケナイのである。名前はあまりというか、殆ど聞いたことがないとは思うが、そのベース・プレイは必ずや耳にしているはずだからネ。TV映画MISSION IMPOSSIBLEのテーマ曲のベース・ラインは、とっても印象的ですよネ?BEACH BOYSは聴いたことありますか?DOORSの「LIGHT MY FIRE」大ヒット曲ですね。これらのベースは全て、CAROL KAYEが弾いているのです。「えっ、ビーチ・ボーイズのベースってブライアン・ウィルソンじゃないの?ねぇねぇどーなのよ」って言う人もいるでしょう。確かにその通りですが、レコーディングではCAROL KAYEが弾いていたのです。ゴースト・プレイヤーっていうんですかね、こういうの。そればかりじゃありません。MOTOWNの音源でも彼女がベースを弾いたものが数多くあるんです。STEVIE WONDER「I WAS MADE TO LOVE HER」や、FOUR TOPS「REACH OUT I'LL BE THERE」とかね。これはほんの一部だけですが名演も多いのですね。ここで音楽に詳しい方々は「おいおい、さっきはビーチ・ボーイズに騙されそうになったけど今度こそは騙されねぇぞ。モータウンのベースといえばジェームス ・ジェマーソンだろう?常識だよ!しかも、白人の女性ベーシストにあんなベースが弾けるかどうか疑問だし、そもそもモータウン・サウンドは黒人が作ってる音楽だよ。おい、何とか言え!こらっ、どうだ、どうだ、どうなんだ」と怒り出す人もいるかもしれません。しかし、もっとその方面に詳しい人の間では、動かし難い事実として定着しつつあるのです。
(参照*モータウン・ミステリー)
ところで、ワタクシがCAROL KAYEを初めて知ったのはエレクトリック・ベースのための教則本でした。その内容も興味深いものでしたので、彼女の弾いている音を聴きたいと思っていたところ、QUINCY JONESの「SMACKWATER JACK」にそのプレイが収録されていることを知り、すぐさまレコード屋に走り、すぐさまレコードを買い、すぐさま家に帰り、すぐさまレコード・プレーヤーにそれを乗せ、全面的に「すぐさまのヒト」となってステレオの前に正座して(ウソだけど)それを拝聴したのでありました。B面3曲目「HIKKY BURR」というビル・コスビーが歌っている?曲のベースがそれでした。ダブル・ストップとペンタトニック・スケールを多用した縦横無尽に暴れるベース・ラインは「メチャクチャカッコイイ」の一言に尽きます。まさにそれは、白人の女性ベーシストが弾いてるとは思えないほどファンキーで、ソウルフルなものでした。その後も彼女のベースを聴きたいがため、いろいろ探しましたが、何しろ1960〜1970年代のレコードは、ミュージシャンをクレジットしているものが少なかったために、それもなかなか困難でした。しかしある日ベースマガジンの片隅に小さくCAROL KAYEのソロ・アルバ ムらしきものを紹介する記事が載っていたのですね。もう、すぐさま注文です。それがこのアルバムなのであります。ジャケットはなんか地味なんですが、内容はエライコトになっています。
このアルバムをリリースしている「HOT WIRE」というドイツのレーベルは、ベーシストであり、ミュージック・ジャーナリストでもある、BERT GERECHT氏によって1989年に創設されました。今までにリリースしてきた同レーベルのカタログを見ると大変興味深いものが数多くあります。例えば「BASS TALK」と名づけられた各国(ヨーロッパ中心)のベーシストを集めたコンピレーション・アルバムも、もう8作品リリースされているし、元ブランドXのベーシスト、PERCY JONESのソロ・アルバムも2作品リリースしているという、かなりベーシスト贔屓なレーベルでもあります。
さて、CAROL KAYEでありますが、彼女は1957年からLAのスタジオでギタリストとしての仕事や、SAM COOKEのレコーディングの仕事(もちろんギタリストとして)をやっていたのですが、1963年のある日、いつものようにスタジオにレコーディング・セッションに行ったところ、来るはずのベーシストがそのセッションに来ませんでした。そこでプロデューサーが彼女にベースを弾いてもらうことを提案。彼女もそれを引き受け、ベーシストCAROL KAYEがここに誕生したのである。メデタシメデタシ。元々ギタリストである彼女は、ベースもギター同様ピックを使って弾いたのですが、フラット・ワウンド弦が張られたフェンダー・プレシジョン・ベースをピックで弾くサウンドは、その後、彼女のトレード・マーク的サウンドとなったのでありました。そして、それはLAのベース・サウンドと言っても過言ではないほど、数多くのレコードで聴かれることになるのです。またそれは多くのベーシストに多大な影響を与えてきました。ジャコ・パストリアス、スティング、ネーザン・イースト、ジョン・ポール・ジョーンズ等もCAROL KYAEの教則本を使って練習していたということですから、やはり彼女の功績は、偉大であったと言わざるを得ないでしょう。 ===============
このアルバムに収録されている曲は今まで未発表の音源ばかりで構成されていて、その内容も共演ミュージシャンも大変素晴らしい。ここでTRACK LISTINGと、ミュージシャンを出来るだけ詳しく紹介してみよう。
1.MOKE AND POKE STOMP(by RAY BROWN)
2.BASS CATCH (by RAY BROWN)
3.GROUNDHOG SHUFFLE (by RAY BROWN)
4.GREENAPPLE QUICKSTEP (by RAY BROWN)
ここまでは「GREASY BASS BLUES BAND」での、1968年のセッション。メンバーは、CAROL KAYE(E.Bass)、RAY BROWN(A.Bass&Bass Melodies)、HOWARD ROBERTS(Guitar)、JOE SAMPLE(Rhodes)、JOHN GUERIN(Drums)、MILT HOLLAND(Congas)。ここで注目したいのは、ベーシストが2人いるということです。しかも1人は大御所RAY BROWNです。JOE PASSのアルバム「BETTER DAYS」でも、CAROL KAYEとRAY BROWNの2人がクレジットされていますが、それについてCAROL KAYEは、こう言っています。
「RAYのベースだけでは"FUNKY"さが十分じゃなかったので、後で自分のFENDERをオーバー・ダブしたのです。」
と・・・・脱帽であります。また当時はこうした理由も含め、ベースを重ねて録るということが珍しくなかったようです。
5.BETTER DAYS(by J.J.JOHNSON)
これはギタリストJOE PASSとの1971年のセッション。メンバーが超強力!JOE PASS(Guitar)、CAROL KAYE(E.Bass)、JOE SAMPLE(Piano)、CONTE CONDOLI(Flugelhorn&Trumpet)、TOM SCOTT(Sax&Flute)、J.J.JOHNSON(Tromborn)、MILT HOLLAND(Congas)、EARL PALMER(Drums)。ドラムスのEARL PALMERも、CAROL同様モータウンでレコーディングしていたという人物である。
6.BASS BLUES(by CAROL KAYE/JOE PASS)
7.BOOGALOO(by CAROL KAYE)
8.SLICK CAT(by PAUL HUMPHREY)
この3曲は、「THE'O'JAI’TRIO」という1970年にCAROLがチームを組んだ、レコーディング・セッション・バンド。これも強力なメンバーで、JOE PASS(Guitar)、CAROL KAYE(E.Bass)、PAUL HUMPHREY(Drums)。この‘O'JAI’TRIOとBETTER DAYSセッションは、JOE PASS「BETTER DAYS」でタップリ堪能できる。
9.GREENS AND HAMHOCKS(by RAY BROWN)
CAROL KAYE TRIOによる1977年のクラブでのライヴ。このライヴで彼女は、アレムビック・ベースを使用している。メンバーは、CAROL KAYE(E.Bass)、MARK SOSKIN(Piano)、JAMES LEVI(Drums)。
10.SUNNY(by BOBBY HEBB)
1973年、LAのクラブ「BAKED POTATO」でのライヴ。使用ベースはギブソン・リッパー・ベース。CAROL KAYE(E.Bass)、HAMPTON HAWES(Piano)、JIMMY HOPPS(Drums)。
11.NEW YORK STATE OF MIND(by BILLY JOEL)
12.THE VERY THOUGHT OF YOU(by RAY NOBLE)
13.IF I WERE A BELL(by FRANK LOESSER)
14.TWISTED(by LAMBERT,HENDRICKS & ROSS)
1986年、CAROLがプロデュースを務めたアーティスト、NOREEN JACKSON の未発表音源。CAROLの最後のスタジオ・レコーディングであった。CAROL KAYE(E.Bass)、DAVE HANSON(Keyboards)、MIKE STOBIE(Drums)。
15.BOB TRACY-FLYING HIGH: TAKE197〜243
ハリウッドでの、BOB PRINCEによる映画音楽の、レコーディング・セッションのアウト・テイク集。
16.THE RADIO INTERVIEW
NATIONAL PUBLIC RADIOでのインタビュー。あの有名フレーズも聴けるのだ。
これまで10,000曲以上のレコーディング・セッションをこなしてきたCAROLは、教則本の執筆や、ベース講師として今も現役で活躍中。1999年、サックス、ギター、ベースのトリオによるアルバム「THUMBS UP」をリリースした。
●CAROL KAYEのプレイを堪能出来る音源。
BETTER DAYS/ JOE PASS(hot wire records)
CARIFORNIA CREAMIN'/ CAROL KAYE & THE HITMEN(hot wire records)
BASS-TALK IV: WHO'S AFRAID OF THE BIG BAD BASS?/ VARIOUS A.(hot wire records)
SMACKWATER JACK/QUINCY JONES(a&m records)
●Official Web Site
■So'Hey Hala■***************
・ベーシスト&コンポーザー。Dinky-Diのアルバム「Spiral Life」全曲ベース担当。メジャー、インディー問わず、多岐に渡りセッション、レコーディング参加。
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